趣意
数々の茶室は、中央に据えられた露地を中心に、四方を囲むように方形の構えを取っています。巧みに設えられたこの構成は、内に広がる静寂の領域と、外界に満ちる喧騒とを明確に隔て、都会のただ中にあっても、茶の湯の本懐のひとつである、思索と洗練のための聖なる空間を創り出すという精神を、見事に具現化したものといえるでしょう。
如庵写 ― 受け継がれる古典の美
大橋茶寮に設えられた如庵写は、戦国の世に生き、茶人としても名高い織田信長の弟・織田有楽斎が築いた国宝「如庵」を再現した茶室です。国宝建築の精神と意匠を今に伝えるこの茶室の存在は、茶室建築の古典的な系譜を誠実に受け継ぎ、守り続けようとする大橋茶寮の姿勢そのものを映し出しています。そして現代に生きる私たちを、数百年を隔てた名匠たちの精神と美の源流へと、静かに結びつけてくれるのです。
桂 ― 皇室の雅
「桂」は、桂離宮に宿る洗練された美意識を彷彿とさせる格式の高い書院広間です。茶会においては、主に点心席として利用されています。
その設計理念は、簡素でありながら雅を尊び、自然の美しさと建築による節制が調和する空間を生み出し、茶の湯における心の研ぎ澄ましを支える場としての役割を果たしているのです。
山吹 ― 親しい集いの場
「山吹」は、親密で気軽な茶の湯の場のために特別に設計された、小ぶりで内輪向きの茶室です。
この八畳間は、参加者同士に温かさと親しみの感覚をもたらすよう意図されており、茶の湯において重んじられる人と人との調和の精神を静かに体現しています。床脇には、繰り抜いた壁に十一本の矢羽を配列する特徴的な意匠が目を引きます。
葵 ― 裏千家の伝統のこころを受け継ぐ
「葵」は、京都にある裏千家の茶室・咄々斎を忠実に再現した茶室です。
この茶室は、明治末期から昭和期にかけて、家元・淡々斎が東京での稽古を行った特別な場所として、格別の意義をもっています。柱には今もなお、その在りし日の家元の痕跡が残り、京都に息づく茶の精神が、東京においても確かに伝えられたことを示す、目に見える証しとなっているのです。
寄付き
寄付き「守貧庵」は、江戸時代の松江藩主であり、名高い大名茶人として知られる松平不昧公にちなんで名付けられました。
茶室に入る前に心を整えることが習わしとされているため、訪れる者はまずこの茶室に立ち寄り、選び抜かれた掛物に思いを巡らせながら、静かな時を過ごします。この席では、心身を整え本席への期待を膨らませる大切な準備をし、亭主側の迎えを待つ場所です。
建築の遺産
それぞれの茶室は、単なる建築の再現にとどまらず、その意匠は異なる時代の茶人たちの知恵と美意識を現代に伝える生きた稽古場として機能しています。
この茶寮は、文化を伝え、心を磨く空間を生み出す伝統的な日本建築の力が、時を経てもなお揺るがないことを示す証として存在しています。